能登の漁師町宇出津発祥の伝承娯楽「ごいた」の遊び方

受け継がれていくこと

こんにちは、ねずみです。

今回の記事は元日に一時的に公開していたものですが

石川県沖での震災のニュースを知り、引き続きの公開を差し控えていました。

記事を書くにあたり、昨年から能登町の文化風土についてずっと調べていましたので

その場所での出来事にとても衝撃を受けました。

 

今現在も被災地で大変な思いをされている人たちがいる中

こういった娯楽の記事を掲載するのはそぐわないのではと考えましたが

今回記事にした「ごいた」が明治時代から現在まで受け継がれてきたという経緯は

人同士を繋ぐ意思の力を感じさせるものだと思うのです。

 

そして今自分は自分にできる役割の1つとして

ごいたという能登の伝承文化を未来に残すための一助になれたらと

そんな意思で今回の記事を残そうと考えました。

 

遊び方の紹介部分等、このブログでのいつも通りの面白おかしい書き方をしていますが

娯楽とは楽しさの中に元気を生み出すものだと思うので

以降の内容はあえて変えずにそのままにしています。どうかご了承ください。

 

能登の伝承娯楽ごいたについて

『ごいた』は石川県能登町宇出津発祥の伝承娯楽です。

 

明治時代、漁師町である宇出津(うしつ)では

海が荒れて漁のできない時季に暇している漁師たちが

こぞって浜辺や風通しのいい場所で、ゴザやムシロを敷いてごいたに興じていたという。

その光景はまさに宇出津の夏の風物詩だったとか。楽しそうでいいなあ(*´▽`*)

今回はそんな、漁師たちが遊んだゲーム「ごいた」についてです。

 

 

 

ごいたの駒

ごいたは道具として将棋の駒に似たものを使います。

将棋の駒との違いは竹製で裏面がなく全部同じ大きさなことです。

これは裏になっている駒がどの駒か分からないようにするためです。

また、今は右にあるようなカードタイプのものも販売されています。

どちらを使っても遊び方はあまり変わらないのでお好みで。

 

ごいたの発祥と色冠との類似性

以前百人一首の遊びの1つ『色冠』の記事で

ごいたと色冠のルールの類似性について少し書きました。

チームが向かい合うことや、受け攻めがあること。反時計回りで進むこと等。

nezumileader.hatenablog.com

 

 

ごいたが生まれたのは明治時代初期の能都町(現・能登町)宇出津。

将棋好きでアイデアマンの布浦清右エ門と、将棋友達で遊び人の三右衛門

その2人によって考案されたとされています。

日頃似たようなことをしているねずみとしては、なんとも親近感が湧く話です。

 

また、百人一首の絵札が広く普及したのは江戸時代初期。

ですが色冠については考案者も考案された時期も不明です。

どちらかの遊びが影響を受けたのか、はたまた偶然似たのか。全ては謎のまま。

 

ゲームのアレンジを得意とするねずみの見解としては

ごいたから着想を得て色冠のルールを考えるより

色冠から着想を得てごいたのルールを考えるほうがしっくりくるので

おそらくは布浦清右エ門と三右衛門のいずれかが色冠を知っていたのではないかと。

 

教えてドラ衛門。

 

ごいたの遊び方

ごいたは「受け」と「攻め」で進行する2対2のチーム戦ゲームです。

手札を出し切れば上がりで、1人が上がればチームとしての得点になります。

先に150点取ったチームの勝利です。

 

まずはペア決め。2種類のカード(駒)を2枚ずつ用意して裏向きのまま取ります。

同じカードを取った同士が同チームになり向かい合って座ります。

位の高いカードを取ったチームの、どちらかの人が最初の親になります。

 

ミケ「ワシが親やぞ。王に従え下僕よ」

ねずみ「いやこっちも王だし!」

グレー「スタート苦手だから良かった」

クロ「僕もー」

 

8種類の駒

ごいたで使う駒は【王飛角金銀馬香し】の8種類。

「馬」は角が成ったやつだとずっと思っていましたが桂馬のことでした。

「し」は歩兵です。歩の裏の「と」が変形してこうなったとか。

なんじゃそりゃー(^O^)

各駒の枚数と点数です。重要なので覚えておくように。

 

ちなみにごいたでの馬は「ばっこ」と読みます。香は「ごん」です。

そういわれるとそんな風に読めるのが日本語の不思議。

 

開始手順と手役の処理

親が全部のカードを配ります(1人8枚ずつ)

同じチーム同士であっても、何のカードが来たかを伝えることはできません。

 

ねずみ「うおーーこれは強い!これは良いぞー」

ミケ「おま、余計な事言うなや」

グレー「ヤバいな。クロ手役ないか?」

【あごのく】

駒を使う場合は伝承的な配り方があります。

①駒を裏向きで円形に並べて親は上を向く(これを「あごのく」と呼ぶ)

②相手チームの1人がいずれかの駒を押さえる。

➂親はあごのいたまま、その駒を始点にして最初に取る駒を指定する。

 

クロ「おさえたよー」

ミケ「よし。そこから18個右のやつや」

ねずみ「面倒くさいから、あんまりずらすなよ!」

あとは指定した駒から1枚ずつ反時計回りで取っていくだけです。

 

 

手役

手札が配られたら手役の有無を確認します。

「し」が5枚以上あれば手役となり、枚数によって点数や処理が変わります。

 

クロ「5枚あったー」

ねずみ「なんですとーーー!?」

グレー「おおっクロ、ナイス。配り直しにしようぜ」

【「し」の枚数と処理】

5枚→配り直しか続行かを相談して選べる

6枚→残り2枚のカードのうち高いほうの点を得る(同じ2枚なら得点2倍)

7枚→残り1枚のカードの倍の点を得る

8枚→100点を得る

チームで5枚ずつ→即勝利!!

 

 

配り直しを選んでも親は替わりませんが、不利と感じた手札を覆せるのは大きいです。

 

クロ「じゃあ配り直しで」

ねずみ「くっそー最強の手札だったのに」

ミケ「お前がそういう事言うからやぞ」

どんな手札が来てもポーカーフェイスでいましょう。

 

受けと攻め

手番では「受け」と「攻め」を合わせて行います。

(受けは上段、攻めは下段に置く)

親の最初のターンは受けがないので、上の段に裏向きで1枚カードを置きます。

続いて下の段に攻めるカードを出します。

 

ミケ「リバースカードセット。金を攻撃表示で召喚や!」

グレー「むむっトラップか」

ねずみ「いや遊戯王じゃねーからw」

 

 

反時計回りで手番は次の人に移ります。

今出た攻めのカードと同じカードを出せばこれを受けられます。(王は例外)

受けた場合、同様に下の段に攻めのカードを出します。

 

グレー「金を金で受けて、飛で攻める」

ミケ「キンタ〇が吹っ飛んだっていう感じやな」

ねずみ「ちょっと何言ってるか分からない」

 

【王の能力】

王は飛角金銀馬を受けられる。香しは受けられない。

攻めで使えば受けられないが、場にまだ王が出ていない場合は攻め駒として出せない。

(王を2枚とも持っている場合に限り2回目の攻めから使用可)

 

受けられない(あえて受けない)

受けられる駒がない場合、あるいは出したくない場合は

「なし」と言って手番は次の人に移ります。

 

ねずみ「くっそー飛は受けられねえ」

クロ「えーとじゃあ僕もパスで」

ミケ「あっ、これクロが持ってるやろ」

味方の攻めを受けるか通すか、状況に応じての判断が非常に重要です。

通すのは誰も受けないまま1周回すのが狙いです。

 

もし1周した場合、上の段に裏向きで1枚出して続けての攻めが行えるからです。

これで1手番に4枚もカードを出せた形になります。

チームでのこうした以心伝心・サポート・阿吽の呼吸がごいたでは何よりも大事です。

 

グレー「おっしゃ次は角で攻める」

ねずみ「くっそーそんなの受けられねえよ」

ミケ「お前まったく役に立たんな」

 

 

上がりと得点

これを繰り返して最初に手札を出しきれば上がりです。

1人が上がればチームとしての上がりになり、チームとしての得点になります。

 

グレー「銀で上がり。裏の札も銀だから30点の倍で60点だ」

クロ「やったーー」

ねずみ「まじかーーカード運だろこんなの

 

 

得点計算

手札は8枚なので、このように8枚出し切れば上がりです。

得点は上がりカードの種類で決まります。

(王50点・飛角40点・金銀30点・馬香20点・し10点)

【得点倍付】

裏になっているカードと上がりカードが同じなら得点は2倍。

裏のカードが複数あるときは後に出したほうが対象。

 

互いを活かすということ

以降は上がった人が親になってゲームは続きます。150点で勝利です。

 

ねずみ「よーし上がった!10点だ」

クロ「その手札で何で10点しか取れないの」

ミケ「ええい、ワシが決めるからパスをよこせやー」

自分の上がりばかり考えて打ってもなかなか得点は伸びないものです。

やはり大事なのは以心伝心。互いの力を合わせてこそです。

 

未来への継承

能登の伝承文化であるごいたを保存継承していくことを目的に

平成11年に設立されたのが「能登ごいた保存会」です。

大会の開催や番付の発行など、ごいた保存会による継続的な活動を足掛かりに

宇出津だけの娯楽だったごいたが今や海外でも遊ばれるほどに広まったそうです。

 

明治時代の漁師町で生まれたゲームが、令和時代の今なお継承され続けている事実は

それだけたくさんの人の意思が繋がってきたことを示しています。

 

そして現在、被災者のために何かできることをしたいという多くの人の意思の繋がりが

被災地の復興のための大きな力になっていくことを確信できるのです。

 

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